Bitter Chocolate
 「お…俺に?」

 「うん…」



 差し出されたそれを受け取ると大槻は真っ赤に頬を染めて小さくうんと頷いた。

 勿論それは言うまでもなくバレンタインの『本命』チョコだと思う。


 俺は今にも飛び上がって踊ってしまいそうな気持ちを抑えて「ありがとう」と答えた。

 すると大槻は凄く華やかで優しい―――例えて言うならぶわっと咲き乱れた満開の桜のような笑顔を見せた。


 ああ、女の子の笑顔って可愛いなぁと思う。

 なんだか本当に春が来たみたいに暖かい気持ちになって俺は嬉しくなった。
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