天国からの贈り物（実話）

『あんた、そんな所にいちゃ危ないよ！』


ヘルメットをかぶった作業員らしき人が言った


するとその中にいた一人が出てきて麗奈の顔をずっと見ていた


『あんた…まさか…卓也君の…麗奈ちゃん？…』


あたしは大きく頷き挨拶をした



その方は５０歳くらいで卓也の会社の下請けの人で何度か卓也と一緒に仕事をしていた


あの事故の日も彼は卓也と一緒に仕事をしていた



『災難だったね…葬式の時、あんたをまともに見れんかったよ…卓也君もあんなに頑張っていたのになぁ…』


あたし達は真新しい縁側に座り外を眺めていた


『あの…卓也は何処から落ちたんですか？』


あたしは思い切って聞いてみた


『あぁ…ここの上だよ…あそこからちょうど、たんぽぽが咲いてあるあの辺に落ちたんだ…一瞬何が起きたか分からんかった…。あの大きな石さえなければ助かっていたかもしれんのにな…。』



あたしは上を見上げ目を覆った



こんな高い所から…


卓也…


痛かったでしょう？


あたしは涙が止まらなかった


『卓也君が亡くなってから、あのたんぽぽが咲いたんだ…不思議だよなぁ…』


『卓也は沢山の夢を与えられるこの仕事を誇りに思っていました』


『あぁ…毎日朝早く来て道具磨いてたしなぁ…そして誰よりも麗奈ちゃんを想っていたよ…。昔の卓也君はどこか冷めていて仕事も休んでばかりだった。どうしようもない不良息子だとあいつの父さんがいつも愚痴を言ってたんだが、あんたに出会って本当に変わったよ。あんたが居たからあいつは夢を見つけれたんじゃ…だから卓也君の為にも絶対幸せにならなきゃきゃだめだぞ！強くな生きないとな』



その時、頑張っていた卓也の姿が目に浮かんだ




おじさんの言葉がずっと頭から離れなかった


あたしだって卓也の事
すごく想ってるよ


あたしだって強くなりたいよ…


でも幸せになるってどうすればいいの？


卓也を忘れることなんて出来ない


忘れるくらいなら幸せになんかいらない…


あたしは、卓也が咲かせた、たんぽぽを手にしてその場にうずくまり泣いた