君と僕<短編>



君は


僕のことを


本当に好きなのか


たまによくわからなくなるんだ。


でも、


今日のではっきりしたよ。


僕は立ち尽くす二人を背に、とぼとぼと歩き出した。


ギターケースとビニール傘を拾い上げると、そのままびしょ濡れになりながら家までの道を歩いた。


後ろから君が僕を追い掛ける足音が聞こえて来た。


僕は振り返らずに、歩いた。


君は、息を弾ませながら懸命に僕の後ろを歩いていた。


君は何も言わなかった。

僕と並んで歩こうともしなかった。

言い訳もしなかった。


数分前まで、君にプロポーズしようって真剣に思ってた僕が、なんだか馬鹿らしく感じた。


涙が雨と混ざり合って、よく分からなくなった。



きっと君は

なんでもはっきり言わない僕に、嫌気がさしてたんだね。


ごめん


好きなのに、何も言えなくて


本当にごめん


夜の街を歩いて、大声で泣きたかったのに、君が後ろにいたから泣けなくて、気付いたら家の前まで来てた。


君も僕も、完全にずぶ濡れ状態。


僕は家に入るなり、バスタオルを二枚持ってきて、一枚を君に無言で手渡した。


君は髪を拭きながら、口を開いた。


「太郎・・・、嫌いになった?」


背中にその言葉を受けた僕は、振り向きもせずにこう言った。


「ううん、」


好きだよ、

きっと死んでも好きだよ


諦められるわけない。


君は何も答えなかった。



その後、僕は君から手当てを受けた。

ま、手当てと言っても目の上を軽く消毒して絆創膏はっただけだけど。


ついでに、気付かなかったけど頭からも血が出てたみたいだから、ちょっと包帯を巻いてもらった。

フランケンみたいになった。


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