君と僕<短編>
4.
今日の店内は、何だか様子がいつもと違った。
店員のゆるさとか、そんなのはいつも通りだけど・・・何かが違ったんだ。
とりあえず、君といつものイスに座る。
君はいつも通り、アップルパイとコーヒーを注文して僕の顔を見た。
今日は、僕も珍しくコーヒーを注文した。
ところであの日の傷は、まだ完全には治っていない。
一昨日ようやく頭の包帯が取れたところで、まだ目の上の絆創膏は残っていた。
顔を洗うとき、多少しみるけどそこは男、我慢我慢!
傷が癒えるのと同時に、段々マスターへの怒りも薄れていった。
マスター・・・・
あっ!マスター
そういえばマスターがいない!
こんな単純すぎる違和感の正体に、がくりと肩を落とした。
今の僕にとって、マスターがいないという状況は、多分きっと喜んでいい状況だと思うが・・・ちょっと複雑だ。
「お待たせしました。」
見たことのない、女の店員がコーヒーとアップルパイをテーブルに置いた。
「あっ!」
君が突然、店員を指さして叫んだ。
ん・・・・?
ってオイ!
見知らぬ店員さんに指さしちゃ失礼だろ!
僕は、咄嗟に君の手を押さえた。
「あっ!」
すると、店員の方も君を指さして叫んだ。
ん・・・・?
知り合い?
コーヒーを一口飲んで、君と店員の様子を見ていた。
まぁ、店員のコは君と同い年くらいに見えるし、学生時代の友達か何かだろう。
だとしたら、すごい偶然だよな・・・
たまたま君が行きつけのカフェで、君の友達が働いてるなんてさ。