君と僕<短編>
でも、もう後戻りできない。
何も考えていないように、軽く相槌をうった。
「でも、純也はあたしと付き合ってる時に、あたしの親友だった幸絵とも付き合ってたんだ・・・」
浮気・・・ってことか
「それで・・・あたし、純也と別れたんだけど・・・ごめん、まだ、ちょっと引きずってるんだ」
君は、泣いてた。
顔見なくても、何となく分かった。
ずっと、ずっと、
僕と出会ってからも
色んなことを抱えて生きてきたんだね
「・・・・なんかもう、限界かもしんない」
結局君は、泣き崩れた。
君は・・・まだ、マスターの事、好きなんだろう
だから、僕を使ってあのカフェに通ってたんだ・・・
「一個だけ、聞いてもいい?」
僕は君に、優しく声をかけた。
「うん・・・?」
「何で僕が、カフェの近くに住もうって言った時、嘘ついたんだ?」
「・・・やっぱ、気付いてたんだね。あれが嘘だったってこと」
君は顔を上げて、潤んだ瞳で窓の外を見た。
「あたしね、やっぱ純也のこと気になってたけど・・・その分、太郎のことも好きだった。だから、せめて家にいる時ぐらいは純也のことを忘れたかったんだ。・・・それで、純也がいる、あの店の近くには住みたくなかったの」
君の、素直な気持ちだった。