君と僕<短編>
5.
家に着いて、すぐにソファーに座る。
君は、洗面所まで行って顔を洗っていた。
なんだか、再びマスターへの怒りが込み上げてきた。
「順子、ちょっと用事できたから出かけるね!」
僕は君に一声かけてから、家を出た。
向かう先は、カフェ関。
もう、こんなに時間が経ったんだから、さすがにマスターだって戻ってきてるだろう。
そしたら、宣戦布告してやるんだ!
映画のワンシーンみたいにカッコよくね。
それにしても、僕一人でカフェ関に行くのは初めてだ。
通い慣れたいつもの道でも、隣に君がいないだけで随分と寂しい。
そんな気を紛らわす為に、大音量で音楽を流した。
君が隣にいたら、絶対に出来ないことだ。
カランコロンカラン
ドアを開けると、いつもの音が出迎えてくれる。
いや、でも
今の僕はそれどころじゃない。
すぐにマスターを探す。
あっ!
案外あっさり発見。
見つけたら、一直線にマスターの元へ歩み寄り、ガッと胸倉を掴んだ。
ちなみに胸倉を掴んだのも初めてだ。
「おい!お前よお、順子の元彼だか何だか知らねぇけどよ、絶対お前なんかに負けねぇからな!」
言い終わるとすぐに手を離し、カウンターを思いきり蹴り飛ばし、店を出た。
我ながら最高じゃん!
なんか、自分じゃない、別の人格が乗り移ったみたいで、正直、その時のことは全く覚えていない。
でも、最高だってのは分かる。
とにかく今は、アドレナリンが急上昇していた。
信号が赤に変わり、一気に冷めていった。
ふと、携帯が鳴る。
隣に住む、おばさんからだった。
「あんたの家、大変よ!家の前に救急車、止まってて・・・」
おいおいおい
嘘だろう