君と僕<短編>
車内は嫌な沈黙が続く。
「太郎・・・ごめんね」
その沈黙を破ったのが君だった。
「え・・・?何が?」
分かってたけど、少しからかった。
「・・・私、太郎と車であのカフェ行きたいの。少しでも長く太郎といたいの」
すぐに嘘だって分かった。
でも、僕はその嘘にわざと引っ掛かった。
君はいつだって、嘘が下手だから。
君が突然、「同居したい」と言い出した時も、同じように「少しでも長くいたい」って君は言った。
その時、「うん」って言ったように僕はまた「うん」と言った。
家に着いて、車を降りる。
君は、スキップもせず、ふらつきながら家の中に吸い込まれていった。
そんな君の姿を見て、唇を噛み締めた。
♪〜♪〜
アコギ片手に適当なメロディーを奏でる。
自分が大好きな部屋、大好きな家で。
でも、未だに僕の曲はなかった。
ずっと、大好きなアーティストの曲を歌っていた。
でも、違う。
この世に一つしかない、自分の歌を作ろう。
そう決めた。