君と僕<短編>



そういえばこの間、ちょっと奮発して君の好きそうな小さな宝石がついた指輪を買った。

それをジャンパーのポケットにしまい込み、近い未来を想う。

きっと、今となんら変わらない毎日に違いない。

君に振り回され、カフェ関でのんびりする。

それでもいいと思った。

ただ単に、パシリが好きだからとかじゃなく、君が好きだから。


想いはこんなに膨らむのに、実際、事を起こそうとするのは難しい。



コンコン

ふと、ドアをノックする音がした。

続けざまに、

「太郎、ご飯だよ」

という、君の優しい声も耳に入る。


母親が子供に呼びかけるような・・・いや、飼い主がペットにでも言うような君の言い方が好きだ。


「はいはい」

ギターを弾く手を止めた。


何で、君には面と向かって言えないんだろう。


こんなに好きなのに、カッコつけて冷めたような態度とって。


実際、僕たちが付き合い始めたのだって、どちらが言い出した訳でもなく、流れでそういう風になってたわけだし・・・・


思えば、僕は君に、一度も素直なことを言ってない。


まぁ、あまり言いすぎるのも・・・しょうにあわないってかあんま良くないと思うんだけど。



部屋のドアを開けた途端、今日の夕食が何なのかすぐに分かった。


カレーだ!!!

子供みたいにテンションが上がった。


僕は、自分で言うのもなんだけど、カレーに関してはうるさい方だと思う。

行きつけのカレー屋はいくつかあるし。

まぁ、チェーン店なんてのはもってのほかだけど。


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