君と僕<短編>



僕は、腹の痛みも忘れてその事ばかり考えていた。


「なに、ニコニコしてんの〜?」


君は、ニヤニヤしながら僕に顔を近付ける。


僕は君にキスをして、そのまま静かに抱きしめた。


こんなにも、誰かの事を愛おしく思った事が過去にあっただろうか。


きっと、こんなに溢れそうなくらい好きになったのは初めてだ。


ただ、口に出来ないのが残念だけど。


口に出来ない代わりに、君を強く抱きしめた。

僕の考えてることが、君に直で伝わればいいのに・・・って何度思ったことだろう。


素直になりたいと、どれだけ感じたことだろう。


今、君に伝わっているかな・・・僕の気持ち。



きっと、こんな僕の姿を見て、歯がゆいと感じる人も少なくないとは思う。


でも、素直になれないもんは仕方ない。


だから、ちょっと大人になる為に僕は君にプロポーズをして大好きなんだって想いを打ち明けるんだ。



抱きしめていた手を離して、君の髪の毛をくしゃくしゃと撫で回した。


君は笑いながら怒って、軽く僕を叩いた。


思わず、笑いが込み上げた。


好きなんだなぁ・・・って、単純にそう思った。



< 9 / 26 >

この作品をシェア

pagetop