君と僕<短編>
僕は、腹の痛みも忘れてその事ばかり考えていた。
「なに、ニコニコしてんの〜?」
君は、ニヤニヤしながら僕に顔を近付ける。
僕は君にキスをして、そのまま静かに抱きしめた。
こんなにも、誰かの事を愛おしく思った事が過去にあっただろうか。
きっと、こんなに溢れそうなくらい好きになったのは初めてだ。
ただ、口に出来ないのが残念だけど。
口に出来ない代わりに、君を強く抱きしめた。
僕の考えてることが、君に直で伝わればいいのに・・・って何度思ったことだろう。
素直になりたいと、どれだけ感じたことだろう。
今、君に伝わっているかな・・・僕の気持ち。
きっと、こんな僕の姿を見て、歯がゆいと感じる人も少なくないとは思う。
でも、素直になれないもんは仕方ない。
だから、ちょっと大人になる為に僕は君にプロポーズをして大好きなんだって想いを打ち明けるんだ。
抱きしめていた手を離して、君の髪の毛をくしゃくしゃと撫で回した。
君は笑いながら怒って、軽く僕を叩いた。
思わず、笑いが込み上げた。
好きなんだなぁ・・・って、単純にそう思った。