恋文~指輪が紡ぐ物語~
一歩、足を入れる。
めったに訪れる事のない図書室。
本の匂い。
棚に並べられたたくさんの本。
普段、本を読まない花乃には、どんなものがあるのかさえわからない。
今朝降っていた雨は上がっている。
日差しの差し込む図書室は、思ったよりも明るく居心地はよさそうだ。
花乃が視線をさまよわせると、窓際の椅子に座る彼を見つけた。
日差しの中で気持ちよさそうに微睡んでいる。
日に透けた髪は、きらきらと輝いているようで美しい。
人の気配を察したのか、彼は顔をあげあたりを見回した。視線の先に花乃を見つけると、柔らかい笑顔を向けた。