恋文~指輪が紡ぐ物語~
「来ると思ってた」
そう言った彼の手には、一度は花乃のものになったはずの小さな指輪が握られていた。
「それ…返して。…私の、なんでしょ?」
小さな声で訴える花乃に、意地の悪い笑顔が返ってきた。
「あれ?これ君のじゃないかもしれないんだろ?」
「…でも、…えっと、あの…」
花乃の視線が机の上をさまよう。机の上に置かれた教科書を見て、彼女ははっとした表情を浮かべる。
教科書に名前は書かれていなかったが、3年生の物だということは一目でわかる。
「あぁ、そっか。まだ自己紹介してなかったね。俺は3年A組の松岡。よろしく」
そう言ってにこりと微笑んだ松岡に花乃は、僅かに頬を染めた。
「…あ、私は…」
「高須賀花乃ちゃん、だろ?」
一瞬きょとんとした表情をした花乃だったが、休み時間のことを思い出し、コクリと頷く。