恋文~指輪が紡ぐ物語~

「どうしてその指輪、私の…なんですか?」

「とりあえず、座れば?それから、敬語もいらない。ついでに先輩ってのもなし。俺、部活とかやってないから慣れてないんだ」

 花乃の質問には答えずに、松岡は自分の向かいの席に着席を促した。

 そして、花乃が座ったことを確認すると疑問をぶつけてきた。

「花乃ちゃんの誕生日はいつ?」

 訝しく思いながらも花乃は、3月21日と答える。
 すると彼は、満足そうに微笑んで、あっさりと花乃の手に指輪を返した。

「よく見てごらん。その指輪は、きっとベビーリングだ」

ーーベビーリング?
ベビーリングってもっと小さいものじゃなかったっけ?

「ほらほら、ちゃんと確かめてみな」

 松岡の低い声が花乃の思考を遮る。

 仕方なく花乃は指輪を見つめた。

 何の変哲もない指輪。今朝見た時と変わらずに、淡いピンクの石がシルバーのリングに埋め込まれている。
 だけど、新しいものじゃない。



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