恋文~指輪が紡ぐ物語~
「何も、思い出さない?」
「え…?」
指輪から視線を上げた花乃が目にしたのは、休み時間に見たどこか悲しげな松岡の笑顔だった。
彼の深い瞳に吸い込まれそうで、見つめていられない。
「あの…それって、あなたは何か知ってる、の?」
「さぁ?でも、その指輪が君のベビーリングって事には自信があるよ」
そう言った彼の髪が日に透けて輝いた。
花乃は、もう一度視線を指輪に戻し観察を開始した。
その様子を見つめる松岡の瞳は複雑な色をしている。
「内側、見てみな」
いつまでたっても首を捻りながら指輪を見つめている花乃が哀れになったのか、松岡は助け舟を出した。
内側?と呟いた花乃は、視線を指輪の内側に移すと、あっ、と小さな声を上げた。