恋文~指輪が紡ぐ物語~
下校を告げる音楽が、静まり返った図書室に鳴り響いた。それとほぼ同時に開けられたドア。
「松岡くん、もう下校時間よ。あら?今日はひとりじゃないのね」
ドアを開けたのは、松岡のクラス担任で図書委員の顧問をしている佐藤という先生。
いつも最後まで残っているのは松岡だけらしい。
花乃を見て微笑んだ。
「高須賀さんももう暗いから気をつけて帰るのよ」
柔らかい声音が、優しく花乃の耳に響く。
どこかほっとする雰囲気を持った先生だ。
「はい、さようなら」
「ちょっと、待った」
席を立った花乃は、きょとんと松岡を振り返る。
「送ってく」
短く言うと、彼もバッグを掴んで立ち上がった。
「あら、松岡くん。優しいわね」
「当たり前じゃないですか。俺、紳士ですから」
先生は目を細めて花乃と松岡を見送ってくれた。