恋文~指輪が紡ぐ物語~

『指輪 受け取りました。
あれは、間違いなく私のものです。
ごめんなさい。私はあなたのことがわかりません。あなたが私の指輪を持っていた理由もわかりません。
だけど、思い出したいの。
だから、教えてください。
あなたの名前。それから、あなたのこと。
    高須賀 花乃』



 昨日、部屋にこもった花乃は、しばらく机に向かったままだった。
 ルーズリーフに文字を書いては消し書いては消しを繰り返し、数時間かかって完成したのが、この手紙。


 松岡の反応は、いいのか悪いのかさえよく分からない。
 だけど、優しく微笑んでくれたことに、花乃はほっとしていた。


 花乃の思い。気持ち。素直に書いた。
 相手がどういう人かも分からないなら、いろいろ考えてもしょうがないと、まんま今の素直な気持ちを書いたのだ。




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