恋文~指輪が紡ぐ物語~
 登校してくる生徒たちでざわつく昇降口。

 雨の音。色とりどりの傘。

 まわりは昨日と同じに見える。
 だけど、見えるだけで本当は、みんなそれぞれにいろんな出来事があるのかもしれない。

 花乃のように。


ーーカラン

 動揺していた花乃が持つ封筒から、スルリと何かが無機質なコンクリートに落ちた。

「え?なに?」

 状況がつかめない花乃の代わりに、志穂はしゃがみこみ落ちたモノを拾う。

 彼女の手に握られたモノ、それはーー。

「指輪?」

 志穂の手に握られた小さな小さな指輪に、不思議そうに首を傾げる花乃。

「封筒から、落ちたよ」

 志穂から受け取った指輪は、近くで見てもやっぱり小さくて。

「…ピンキーリング?」

 シルバーのそれに、淡いピンクの石が埋め込まれている。


ーードクン 

 指輪を手にした花乃の胸が、何かを訴えるように音を立てた。

「…とりあえず、教室行こ?」

 志穂の声で我に返った花乃は、慌てて指輪を封筒にしまった。


ーーカラン








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