恋文~指輪が紡ぐ物語~
「それは、どういう意味ですか?」
「どうって…そのままの意味だよ。君がどれだけ反対しても無駄ってこと」
つかみ所がない。感情を表さない。核心を話さない。
これでは話が進まない。
「…花乃のことどう思ってるんですか?」
話が平行線になると思った志穂は、話を変えることにした。
志穂の問いに、意外だったのか松岡の瞳が揺らいだ。
「…可愛い子だよね。素直でまっすぐで、疑う事を知らない。君が過保護になる気持ちが分かるよ。なんていうの?庇護欲が湧くっていうか…」
志穂が聞きたいのは、そんな答えじゃない。
「花乃に近づいた目的は?」
「指輪の元の持ち主を探すため」
「あなた、でしょ」
一瞬間が空いて、松岡は口の端を持ち上げた。
「さすが、副会長。よくわかったね」
「当たり前じゃないですか。分からないのは、花乃くらいですよ」
松岡の反応に志穂のイライラは募っていく。
「…言わないで。花乃ちゃんにはまだ言わないで」
僅かにトーンの下がった声に、志穂はハッとして彼を見つめた。