恋文~指輪が紡ぐ物語~
先ほどまでのとらえどころのない表情が真剣な表情へと変わっていた。
「なにを、企んでいるんですか?花乃に近づいたのは、花乃が好きだから、じゃない?」
なんとなくそう感じた。根拠はない。だけどそれならば、どうしてそんなに哀しそうな瞳をしているのだろう。
「心配しなくてもいいって言ったでしょ?違うよ」
真剣な眼差しに志穂は、何も言えない。彼は悪い人じゃない。花乃のようなことを思い始めていた。
でもだけど、これだけは言わなきゃいけない。
「先輩が真剣なのは分かりました。でも花乃を泣かせないでください」
「…それは」
松岡は珍しく口ごもり言いづらそうに、だけどはっきりと言った。
――保証できない。
「なっ、なにふざけたこと言ってるの」
考えるよりも早く言葉が漏れた。
志穂の剣幕にも動じずに松岡は、やはり真剣な顔をしている。
「…花乃ちゃんは知らなきゃいけないんだ。君は、そんなの知らなくてもいいって言うかもしれない」
だけど、と彼は続ける。花乃ちゃんは知らなきゃいけないんだ、と。