恋文~指輪が紡ぐ物語~
あなたは、誰?
* * *
静けさがやけに響く。不思議な事を感じると、ひとりベッドの中で思った。
いつものようにベッドに入って眠ろうとした花乃だったが、全くといっていいほど眠気が訪れない。
頭が冴えているのだ。
昼休みにどこかへ行っていた志穂。戻ってきてから様子がおかしかった。
放課後に会った松岡。彼もいつもとは様子が違っていた。いつものんびり構えている彼が、今日はどこか焦っているようだった。
何度か寝返りを打ったが、やはり眠気は訪れない。
諦めた花乃は、水でも飲もうとキッチンへ向かった。
しかし、キッチンには先客がいるようで明かりが漏れている。
看護師をしている母親は不規則な生活をしている。そんな母がテーブルに肘をついてぼんやりとしていた。
その表情をみた花乃は、ハッとした。
――この表情…