恋文~指輪が紡ぐ物語~
 全く頭に入ってこない授業が終わると、花乃は真っ先に志穂のところへ行く。

「しーちゃん、大変なのっ。指輪、無くなっちゃった」

 志穂は呆れた顔をしているが、花乃はそれに気付かずに言葉を続ける。

「どうしよう…探さなきゃ…」

「そんな、誰からかもわかんない指輪に必死になる必要なんて…」

『花乃ちゃ~ん』

 どこか冷めた眼差しの志穂の言葉は、教室の入り口にいるクラスメートの花乃を呼ぶ声に遮られてしまった。

 花乃が視線を向けると、彼はおいでおいでと手を振る。

「花乃ちゃんに用だって」

 教室の入り口まで来ると、ドアの裏に男の子が立っていた。

ーー誰だろう?

 花乃の記憶の中にはいない。

 知らない人に呼ばれることなんて初めてで、人見知りをする花乃はおずおずと彼を見上げた。

 背の低い花乃は、大抵男性と話しをする時は上を向く。







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