恋文~指輪が紡ぐ物語~

    * * *


 花乃は、携帯から流れるいつものアラームにはっとして、携帯を開く。いつの間にかうとうとして、そのまま眠ってしまったらしい。

 いつも起きる時間。
 だけど、ベッドから起き上がる気にはなれない。
 きっと、目は真っ赤に腫れているだろう。
 学校、どうしよう? 行きたくない。
 こんな顔で学校なんかに行ったら、志穂に心配される。

 ただ喉はカラカラに乾いていた。あれだけ泣いたのだから当たり前だ。水分補給しなきゃ、と花乃はキッチンへ向かった。そして、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して部屋へ戻った。

 悩んだ末、志穂に『今日は学校休むから』とメールをして携帯の電源を切った。きっと、志穂から電話かメールが届くだろう。だけど今は、話をしたり返信をしたりする気力がない。


 たった一晩で気持ちの整理なんてつくわけがない。
 まだ、夢だったんじゃないかと思いたい。だけど、机の上にある真っ白い封筒が今までのことは夢なんかじゃないってことを物語っている。


 封筒の隣に置いたままのベビーリング。

 花乃の父親から花乃へ、そして浩介へ渡り、そしてまた花乃に戻ってきた。


 いろんな想いを乗せて人から人へ―――



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