恋文~指輪が紡ぐ物語~
二日ぶりに袖を通す制服。何となく気持ちが引き締まる。
花乃は鏡の前に立ち、自分の姿を確認する。一回りして、おかしいところがない事を確認すると、鏡に向かってにっこりと微笑んでみる。
「……大丈夫。ちゃんと笑えてる」
鏡の中には笑顔の花乃が映っていたけれど、心から笑えていない証拠に目が昏い。花乃自身はそこまで気にする余裕はない。
気付く者も多くはないだろう。母や志穂、他には仲良くしているクラスメイト数人くらいだろうか。
学校指定のスクールバッグを手に部屋を出ようとした花乃だったが、机の上で光っている指輪が目に入った。
少し戸惑ったあとに、それを首にかけて部屋を出た。
いつも学校へ行くより少し早い時間。
もし、志穂が朝練に行っていないなら一緒に学校へ行きたいと思った花乃は、隣へ寄って行くつもりだ。
いつも朝練が無い日は、志穂が花乃の家に迎えに来てくれる。
だけど、二日間も一方通行のメールだけだったのだ。ちゃんと謝りたいと思っていた。
いつも思う。甘えてる、と。どれだけまわりに助けられているのだろう。花乃は、いつも落ち込んだあとにそう思う。
「いってらっしゃい」
「いってきます」