恋文~指輪が紡ぐ物語~
* * *
「……なんとか、終わった」
花乃が苦戦した三日間のテストはあっという間に終わった。
教室中にテストが終わった解放感が漂っている。
そんな中、花乃が絞り出した声はかわいそうになるくらいに疲れ果てていた。ぐったりと机にうつぶせになり、見るからに力尽きている。
「おつかれ。結果はともかく、よくがんばったよ」
花乃の前の席に座って、志穂が振り向きながら声を掛けた。
すると、花乃は机にかじりついたまま顔だけを志穂の方へ向けて答えた。
「……うう、痛いところを。でも、しーちゃんのヤマはよく当たるね。かなり助かっちゃった」
「そりゃあね。先生の性格が分かってきたから、出しそうな問題はなんとなく分かるようになってきた、かな」
志穂は、いつ勉強しているのか分からない。
花乃が知る限り、勉強している形跡はない。家でやっているかもしれないが、前日のテレビ番組の話題もついていけるし、雑誌や本も読んでいる。それでも毎回、学年でも上位に入る。本人曰く、「要領がいい」そうだ。基本的に真面目に授業を受けているのに、いつもテスト前には必死になる花乃にはうらやましい限りだ。それでも赤点ぎりぎりの科目もある。