恋文~指輪が紡ぐ物語~
 見上げた男性は、少し長い前髪の間から瞳を覗かせ花乃を見た。
 少し憂いを含んだ深い瞳で見つめられた花乃は、慌てて視線を逸らしてしまった。

「…コレ、君のだろ?朝、げた箱で見かけた」

 低く響く彼の声。

 彼の手には、先ほどまで花乃が必死になって探していた指輪がある。

「あっ。…えっと、落としたのは、私なんだけど…私のじゃない、かも」

 しどろもどろに答える花乃に彼は不思議な表情で「なにそれ?」と目を細めた。

 どうしていいか分からずにわたわたしている花乃は、事の経緯を説明していた。

「…へぇ」

 花乃の話が終わると、彼はそう言って悲しそうな寂しそうな表情を見せた。

 花乃はなぜか、胸が痛む。

 知っている、と思った。
 彼を、じゃない。彼と同じ表情をどこかで見たことがある、と。

 それは、誰だったんだろう?
 どこで見たんだろう?








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