恋文~指輪が紡ぐ物語~
「君、花乃ちゃんだよね。名字は?」

「え?…あ、高須賀です」

「ふ~ん」

 彼はそう言って、何かを考えるように黙り込んだ。

「…その指輪、君のだよ」

 ぽつりと呟いた彼の言葉に顔を上げた花乃は、彼の深い瞳とぶつかった。

「そ、それって…」


ーーキーンコーンカーンコーン


「残念。時間切れ。もし知りたかったら、放課後、図書室においで」

 彼は右手を上げて「じゃあね、花乃ちゃん」と言ってくるりと後ろを向いて歩いていく。

 意外な展開に、花乃の頭はついていけない。

 あの指輪は、私の?
 なんで彼が知っているんだろう?
 そういえば、彼は誰だろう?

 そして、花乃はいちばん大切なことに気がついた。

「あ~、指輪っ!?」

 花乃の手には肝心なモノがない。

 そういえば、手を振っていた彼の手で何かが光っていた。


「高須賀~、授業始まってっけど」

「ふぇ、あっ、ごめんなさい」

 教壇で歴史教師・笹本が、花乃を見ていた。

 まだ20代のこの教師は、生徒に人気がある。

 花乃も同様で、注意を受け、恥ずかしさで顔を赤らめ席に戻った。








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