【短編】彼のため[続編2追加]
「佐藤くん。
どうかした?」


進藤さんが不思議そうに聞いてきた。


今は、バイト中だった。


余計なことは、考えるべきじゃない。


「なんでもないよ。」


俺は、いつものように笑みを浮かべた。


「紘も気にしてたよ。」


進藤さんは、呟くように言った。


そんなに俺って悩んでたのか?


「まあ、なにもなくはないけど。
どうしようかと思っただけ。」


「佐藤くん、意味がわからないよ?」


進藤さんは、首を傾げた。


ホントに進藤さんは、無防備だ。


紘が心配するのが、よくわかる。


「別れた彼女が帰国するんだ。」


「佐藤くんは、今でも好きなんだね。」


やっぱ、わかるのか。


美沙への想いは、嘘をつきたくない。


取り繕うなんて余裕が、ない。


「嫌いで別れたわけじゃないから。
俺が、彼女の将来を潰すのが怖かったから。」


「佐藤くんは、ホント優しいね。」


俺は、優しくない。


ただ。


自信がなかった。


だから。


怖かった。


今も自信なんてない。


けど、わかったんだ。


美沙がいるだけで幸せなんだって。


もう、逃げない。


気持ちを素直に伝えたい。
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