ヴァンパイア†KISS~孤高の花
ガイアの巣窟の最深部にある巨大ダンスホール「ヴァンパイア・キス」

その場所は、ヴァンパイアたちが夜ごと甘美なダンスに興じる魅惑の場所であった。

ヴァンパイアのダンスは人間のそれよりも、甘美で優雅な色香を放つ。

そこには、人間にはないエクスタシーのオーラが存在していた。

ヴァンパイアたちの中では、より多くのエクスタシーを放つダンスを踊ることのできるヴァンパイアがより多くの尊敬の念を集める。

必然的に、ヴァンパイアの血の濃い最も高貴な者たちは、そのダンスからも魅惑的なエクスタシーを放っていた。




「ユーゴ様とクローディア様だ!」

ヴァンパイア・キスに颯爽と現れたユーゴとクローディアのタンゴを100組ほどのダンスカップルたちが悩ましげに見つめる。

彼らのタンゴは、ヴァンパイアたちのエクスタシーを増大させるほどのエロスを放っていた。

ユーゴは浅黒の野性的な顔に、銀髪を振り乱し、クローディアのしなるような体に応える。

クローディアは至福の官能を味わっていた。

それと同時に、かつての恋人、ユーゴの弟であるウルフガングの姿がその胸にチラと去来する。

(ユーゴの官能を味わえば味わうほど、わたしは、ウルフを思い出す……。その強力なヴァンパイア・キスの力でわたしの官能を全て奪い去ったユーゴ。……わたしはいまだに、ユーゴの子であるデュオとルシアを愛せないでいる……)




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