ヴァンパイア†KISS~孤高の花
兄とワルツを踊り終え、自室へと戻る帰路の途中。

暗い廊下ですれ違う一人の男の影があった。

デュオがその影に向かって振り向く。

「伯父上、ですよね?」

男は虚を突かれたように立ち止ると、二人に向き直った。

その背の高い男は、首の後ろで一つに束ねた腰まである銀髪を揺らめかせ、ゆっくりとデュオの前に跪いた。

(伯父上?…ということは、お父様かお母様の兄弟…?。そんな人、聞いたこともないわ…)

ルシアはデュオの横でじっと男を見上げた。

男は右手を胸の前に添え、紳士的な面持ちでデュオに向かって跪きながら一礼した。

「お目にかかるのは初めてですが、なぜ私のことを?あなたの父上も私のことはお話しになっていないはずですが?……デュオ様」

デュオは自分よりもかなり年上なその男に手を差し伸べると、目を細め、苦笑した。

「母上がたまにあなたを遠くからじっと見つめているのが気になってね。ブルースに調べさせた。あなたは父上の弟のウルフガング。あなたにとって父上は恋人を奪った憎き仇だ。そしてその息子の私も、ね。デュオ『様』などと呼ぶ必要はない」

ウルフガングはまだ年端もいかない子供に、全てを見抜かれていたことに驚きを隠せずにバイオレットの瞳を見開くと、

「ブルースか。確かにうるさい子供が私の周りをうろちょろしていたな…。君よりも一つ年下だったか。子供だと思って油断したよ。これはまんまと子供の罠に引っ掛かってしまったな!」

そう言いながら、太陽のように笑った。






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