出会う確率の方程式
勇気はカプセルを見つめたまま、動けない。

そんな勇気の様子をじっと、ただ太田は見つめていた。

勇気は拳をゆっくりと開くと、太田に背を向けた。

「俺が…あなた方に、手を出すはずがない。その為に、この時間に来たのだから」

少し早足になり、渡り廊下から消えようとする勇気に、

太田は軽くため息をつくと、最後に声をかけた。

「個人的には、あなたの行動を応援しているわ」

「クッ!」

勇気は、グラウンド側にのびる階段に足を降ろした。

そして、階段を降りながら、勇気はテレパシーを飛ばした。

(聞こえているはずだ!)

勇気の瞳が、赤く光った。

(話がある!)
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