出会う確率の方程式
「男の子がいない…」

目を見開き、周りを探してみるが、少年はいない。

「男!」

メグは素っ頓狂な声を上げると、あたしの前に踊り出た。

「男って…あん!あんたが、男に見とれてたの!う、うそ!睦美が!誰よ!誰よ!何組の子なのよ!」

捲し立てるメグを見て、あたしは首を横に振り、力なく笑った。

「違うよ。学生服着てたから、うちの子じゃないよ」

「違う学生の子が、いたの!?」

「う、うん…」

呟いた自分の声が、耳から遠ざかる。


夢…幻…幻覚…

妄想…雨粒…水溜まり…

夕陽…赤…黒…学生服…

男の子…微笑み…

夢…幻…。

同じ言葉が、何度も何度も繰り返し、消えていく中で、

彼の表情だけがいつまでも、あたしの中で浮かんでいた。
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