出会う確率の方程式
「ちょっと、ちょっと!睦美!ゴメン、怒らないでよ!」

メグは走って、あたしの前に出た。

「睦美って、自分じゃ知らないでしょうけど、結構人気あるんだよ。だから、あんたがライバルだと…ちょっと分が悪いかな」


また追い抜こうとするあたしに、

「こら!こっちがしたでに出てると思って!かわいいとまで言ってるのに、無視か!」


なんか馬鹿らしくなってきて、あたしは足を止めた。

「まったく、メグには負ける」

「あとで、ジュース奢るからね」

メグがペロッと舌を出した。

前方の踏切が閉まった。これを渡れば、改札がある。

「ほら、これ見て」

踏切の前で立ち止まりながら、メグは鞄の中から一枚の写真を取り出した。

「高橋くんの写真!この前の試合の時、なんとか撮ることができたの!いいでしょ!これを中学の友達に見せたら、かっこいいって言われたの!」

騒ぎまくるメグの嬉しそうな表情に、半分呆れながら、

「その友達に写真を見せた時、何と言ってみせたのよ」

「もちろん!あ・た・し・の・か・れ・し☆」

ウインクまで投げ掛けてくるメグに、あたしは頭を抱えてしまう。

「あんたは、幸せだわ」
< 14 / 290 >

この作品をシェア

pagetop