出会う確率の方程式
踏切がやっと上がった。

次々に、車や自転車があたし達の横をすり抜けていく。


「さようなら」

微かだが、耳許で少し低く力強い声が、聞こえてきた。

振り返る間もなく、その声の主は、あたしの横を通り過ぎていった。

そして、彼は追い抜いた自転車から振り返った。

「た、高橋くんだあ!」

メグが声を上げた。

ほんの一瞬だった。高橋くんはすぐに前を向き、力いっぱい自転車をこいだ。

あたしに言った?。

また再び踏切が鳴り出した。

忙しく人々が走り出す。

もう高橋くんの姿は見えない…。

「えっ?何、今の!高橋くん…今、あんたの方を見てなかった?ねえ、ねえ…」

詰め寄ってくるメグの顔を見ずに、あたしは改札に定期を通した。

「ねえ、睦美!」

メグは後ろから、あたしの手を掴もうとした。
< 15 / 290 >

この作品をシェア

pagetop