出会う確率の方程式
すると、高橋はいきなり顔を上げ、あたしを見つめた。

「え」

その眼光の鋭さに、あたしが思わずたじろいだ瞬間、

あたしの体は金縛りにあったように動けなくなった。

「ええ!」

あたしは、指一本も動くことのできない状況よりも、

あたしを見つめる高橋の目に息を飲んでいた。

街灯のあたらない…月明かりだけの川辺で、赤く燃えるような瞳。


(普通の人間じゃない?)

その感覚は、昨日までの高橋にはなかったものだった。
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