出会う確率の方程式
あたしを一度見てから、勇気は少し顔をそらし、

「ミュータントは…人から産まれ、人とは違う種族」

悲しげに、笑った。

それからは、ずっとあたしを見ないで、 高橋の方だけを見て、

「人は普段…脳の30%しか使っていないと言われている。僕達…ミュータントで40%…。たった10%で、人は人とは、認識されなくなった」

勇気はしゃがむと、高橋の頭に手を当てた。

「ショートしたのは、人間が一生使わない部分。熱を冷まし、ダメージを抑えれば、人としては生きていけるはずだ」

勇気の手が光り、高橋の頭を包んだ。

「あとは、彼と…彼女達の記憶を消せばいい。少し時間がかかるけど」

高橋の治療がすむと、勇気は倒れている町子達のもとへ、歩いていく。

途中、何もないところでつまずいた。

どうやら、力がほとんどないみたいだ。

「あ、あたし」

急いで勇気にかけよると、肩を貸してあげた。

「ありがとう」

勇気は素直に、あたしに寄りかかった。
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