出会う確率の方程式
「それこそが、運命を変えることなんだ…」

ぎゅっと抱き締められると、あたしはまた涙を流した。

(ああ…)

あたしは心の中でも、泣いていた。

居場所がないと…毎日嘆いていたあたしは、やっと…居場所を見つけたんだから。


「睦美には、苦労をかけるかもしれないけど…許してくれる?」

勇気はさらに、強くあたしを抱き締めた。

「うん」

あたしは頷いた。

「ありがとう」

そして、勇気は少しだけ…あたしから離れた。

目の前にある勇気の顔も、涙でぐちゃぐちゃだった。

二人して笑うと、

あたし達は自然とキスをした。


夕陽が、完全に沈むまでの長いキス。

それが、勇気とのしばしの別れを意味していた。
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