出会う確率の方程式
「は、は、は」

息を切らし、振り袖を軽く振り回しながら走るあたしは、

突然…足が軽くなった。

「む、睦美!?」

あたしの下から、森山の声がした。

え!

下から!


驚いたあたしが、足元を見ると、

森山と太田が小さくなっていくのが、見えた。


「ええ!」

あたしはいつのまにか、空を飛んでいた。

眼下に広げる町が、豆粒くらいになった時、

あたしの上で声がした。

「迎えに来たよ。睦美」


あたしが顔を上げるより速く、声の主はあたしの目の前に現れた。


「勇気くん!」

あたしの前で浮かんでいるのは、勇気だった。
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