出会う確率の方程式
「ず、ずるいよ」

真っ赤になるあたしを見て、勇気は幸せそうに笑った。

「だけど、もうできたからさ」

勇気はもう一度、キスをしてきた。

「もお〜」

なんか…誤魔化されるような。



勇気はあたしを抱き締めて、空から見える丸い地平線に目を細めた。

「俺は最初の一年…世界中をまわった。その結果、人間同士でもわかりあえずに、争っている光景を何度も目撃した」

抱き締める腕に、力が入る。

「これから生まれる子供達やミュータントは、多分…相いれることはできない。この時代で、どんなに頑張っても」

勇気とあたしの周りに、透明の球体ができると、側面が赤く燃えだした。

「だから、いずれ…時がもっともっと経ち、お互いを理解…いや、ミュータントが、対等に人間と対話できるまでの居場所をつくろうと思った」
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