出会う確率の方程式
「だから、どいてほしいんだけど」

無情にも、ここで始業のチャイムが鳴り、

群がる蟻が一目散に、自らの席に戻っていく。

「あああ…」

声にならない声を発しながら、肩を落とす実習生。

「――そ、それでは、本日…担当の中村先生が急用で、お休みになられましたので、朝のホームルームは、私が代行することになりました」

気を取り直し、出席を取ろうとした時、1人の女子生徒が立ち上がり、

「はあい!先生質問で〜す!先生って、彼女いるんですか?」

いたずらぽい瞳で、見つめながらきいてくる生徒に戸惑いながらも、

「いません」

と真面目に即答してしまったものだから、さらに質問は続く。

「キスとか経験あります?いつですか?」

「家は、どこですか?」

出席を取ろうにも取れず、質問も段々と多くなってくるから、どうしたらいいのか…おろおろする姿に、かわいいと声がした。
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