出会う確率の方程式
大きな黒い瞳に、軽くつむんだ唇が印象的で、あたしを射ぬくように見つめていた。


誰…?

この学校の生徒じゃない。制服が違う。うちは、ブレザーだもん…。


少年は、瞳と同じような黒い学生服を着ていた。

少年の瞳が、あたしの瞳を見つめている。

それからおもむろに、今までつむんでいた口をほぐし、微笑んだ。

微笑みが、あたしを包んだ。

ビクっと思わず、身を震えさすあたしを見て、彼は手を差し伸べようと、一歩踏み出した。


こっちに来るの…。


あたしは彼の瞳から、目を離さずに、ただそのままの姿で、凍りついてしまった。


夕陽が沈んでいく。

彼の瞳が近づいて来る。

あたしは…。
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