出会う確率の方程式
だけど、それは…夕陽が隠してくれるはず。

「こんな時間に、どうしているんだい?」

夕陽と逆光の位置に、彼はいた。

あたしの顔が、笑顔になった。

最初…泣いてて気づかなかったけど…この声は。

また心臓が激しく動き出す。

彼が近づいてきた。夕陽の輝きから、抜け出したその表情は…。

「試験勉強でもしていたんですか?」

明るい笑顔の表情は、彼ではなかった。

あたしは、笑顔のまま…凍りついた。

あたしの前に現れたのは、あの実習生だった。


「どうかしました?」

訝しげに、実習生はあたしを見た。
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