出会う確率の方程式
「い、いえ…」

あたしはあまりのショックの為に、

きちんとした言葉を発することができなかった。

そんな自分にもショックを受け、

あたしは…気付いた時には駆け出していた。


「あ、あのお…」

実習生の声が、耳に入ってきたけど、

あたしの心には届かない。


渡り廊下を離れ、

少し距離をおいてから、

やっとあたしは、立ち止まり、

溢れ出す思いを感じた。

涙が、大洪水だ。


そうか、そうなんだ。

あたしは、泣いていた。

彼が来ないから、

ショックを受けたからではなくて、

好きな男の子の声もわからない自分が、悲しかったのだ。

好きな男の子の…。
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