出会う確率の方程式
敵の思惑を理解した勇気ははっとして、

後ろにいるあたしに振り返った。


「大丈夫?怪我はなかった」


その言葉に、まだ口をきけいあたしは、何度も頷いた。

(それは、あたしの台詞だよ。もう…怪我してるけど)

心の中では、言葉になったけど。


「どうしたの?」

あまりにも、あたしの様子がおかしいから、

勇気は心配そうに近づいてきた。

「あ、あ、あ」

まだ言葉にならない。

「?」

「あ、あ、あ」

あたしは指を差し、

「せ、せ、せ、せな…か」

何とか片言だけ発した。
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