君と、○○のない物語
2
ところで朔太郎は元々成績がいいわけでもないし、むしろ学期途中で転校してきたためテストは完全に不利だ。
なので全教科終了後にはわかりやすく撃沈していた。
周りの生徒達は晴れ晴れとした様子で、久々の部活に赴いてゆく。
朔太郎の友人らも意気揚々とバスケ部に向かって行った。
かたや傷心の朔太郎は掃除やホームルームなど全て終え、さっさと学校を出る。
(…つーか、公鳥の事聞くの忘れてたし…)
皆がいなくなってから気付いて、余計にため息が出た。
公鳥は既にいない。
よく見ていなかったが、号令が終わると同時に出ていった気がする。
「―…あ、大月くん、夏樹見なかった?」
二階にあるクラスから、階段を降りて昇降口に向かって廊下を進んでいると、曲がり角で鉢合わせるようにして茅原と会った。
どうやら昇降口まで行って戻ってきたらしい。
「多分ホームルームのあとすぐ教室出てったけど…何で?」
「先生からプリント渡しておけって頼まれたの。私日直だから。けど何処にもいなくて、帰っちゃったかなー…夏樹の下駄箱どれだかわかんなくって。」
プリントは結構前に配られたもので、公鳥の場合なくても構わないもの(保健室だより等)のような気がするが、教としてはそういう訳にはいかないのだろうか。
テストが終わったのでもう当分出席して来ないだろうし、第一もうすぐ夏休みに入ってしまう。
今日渡すべきだったのだろうが、担任、なんとズボラな。
「…俺、届けようか?」
「え?」
「俺部活とかないし…、暇だから。」
「でも大月くん、夏樹の家知ってる?」
「あ。」
丁度公鳥に聞いてみたい事もあり、いい口実だと思ったのだが、そういえばここからどう行けば公鳥の家なのか全く分からない。