君と、○○のない物語




ところで朔太郎は元々成績がいいわけでもないし、むしろ学期途中で転校してきたためテストは完全に不利だ。

なので全教科終了後にはわかりやすく撃沈していた。

周りの生徒達は晴れ晴れとした様子で、久々の部活に赴いてゆく。

朔太郎の友人らも意気揚々とバスケ部に向かって行った。

かたや傷心の朔太郎は掃除やホームルームなど全て終え、さっさと学校を出る。

(…つーか、公鳥の事聞くの忘れてたし…)

皆がいなくなってから気付いて、余計にため息が出た。

公鳥は既にいない。

よく見ていなかったが、号令が終わると同時に出ていった気がする。



「―…あ、大月くん、夏樹見なかった?」

二階にあるクラスから、階段を降りて昇降口に向かって廊下を進んでいると、曲がり角で鉢合わせるようにして茅原と会った。

どうやら昇降口まで行って戻ってきたらしい。

「多分ホームルームのあとすぐ教室出てったけど…何で?」

「先生からプリント渡しておけって頼まれたの。私日直だから。けど何処にもいなくて、帰っちゃったかなー…夏樹の下駄箱どれだかわかんなくって。」

プリントは結構前に配られたもので、公鳥の場合なくても構わないもの(保健室だより等)のような気がするが、教としてはそういう訳にはいかないのだろうか。

テストが終わったのでもう当分出席して来ないだろうし、第一もうすぐ夏休みに入ってしまう。

今日渡すべきだったのだろうが、担任、なんとズボラな。

「…俺、届けようか?」

「え?」

「俺部活とかないし…、暇だから。」

「でも大月くん、夏樹の家知ってる?」

「あ。」

丁度公鳥に聞いてみたい事もあり、いい口実だと思ったのだが、そういえばここからどう行けば公鳥の家なのか全く分からない。
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