桃色ドクター
ドンドンドンドン!!
「大丈夫ですか?瀬名整形外科の者です」
玄関のドアを叩く男性は、さっきの甘い声の男性ではないようだ。
それとも、必死になっているせいで、声が違う印象なだけなのか。
「…はい。今、開けます」
下着まで履き替えた私は、大馬鹿者だ。
腰だけでなく背中まで痛くてたまらない。
這うようにして、玄関へ到達した。
ガチャ…
大きな体をした男性が立っていた。
例えるならば、柔道の選手のような。
力持ちではあるけれど、彼に抱っこされても私の胸はときめくことはない。
やっぱり、雅也の方が色気あるよなぁ、なんて考えながら車まで抱っこされた。
彼の声はどう聞き間違えても、さっきの甘い声ではない。
マンションのエレベーターの中に、上の階のおばあさんが乗っていて、顔から火が出るほど恥ずかしかった。
「大丈夫ですか?医院長が、どうしても迎えに行ってやれって言うもんで、今日は遅番だったんですけど、家から直接来ました」
ちょこっとした恩を着せて、彼は優しく私を後部座席に寝かせてくれた。
大きな体をしているわりには、私の腰に負担のかからない素晴らしい運転テクニックを持っていた。