桃色ドクター
「医院長、優しすぎて困るんですよね。特にお年寄りには…」
悪気のないことはわかるが、彼の言葉に胸が痛んだ。
お年寄りって…
ん?
まぁ、聞き流そう。
電話に出たのは甘い声の若者だったし、医院長なんて関係ない。
車から、待合室の奥へ抱っこされたまま連れて行かれた私は、ベッドの上に放置された。
待合室には、まだかまだかと9時になるのを待つお年寄りで溢れていた。
まだ新しい病院らしい。
真っ白な壁にはお洒落な模様が描かれていて、天井はピンクの花模様だった。
ピンクが好きな私は、この病院がすぐに好きになった。
壁掛け時計も、雅也の選んだ見にくい時計ではなく、はっきりと時間のわかるシンプルな時計だった。
見たこともない器具が並べられていて、わくわくする部屋。
もし動けたら、間違いなく私は初めて見る面白い運動器具を触りまくっていただろう。
「大丈夫ですか!!」
駆け足で部屋に入ってきた男性の顔を見る前に、私の胸がドキンとした。
あの甘い声の彼だ。