桃色ドクター
「はい、平野さん。お久しぶりです。もう、私の椅子を貸す必要はありませんね。随分良くなったでしょう」
爽やか過ぎる笑顔で微笑む。
胸ポケットから出したボールペンでカルテに何やら書き込む。
人差し指を机にトントンとしながら、前のページのカルテを見返す先生。
まるっきり医者の顔。
当たり前だけど、この人って医者なんだなぁ。
私の知らないことをたくさん知っている偉い人なんだ。
「では、ベッドに横になって待っていてください」
横に看護婦さんがいるのに、瀬名先生は少しニヤっと笑った。
ドキドキする。