桃色ドクター


瀬名先生は次の患者さんを診察室に入れ、診察を始めた。


私は、遠くから聞こえる瀬名先生の声を必死で拾う。



「無理しちゃいけませんよ」



瀬名先生の口癖。


おばあさんであろうその患者さんは、赤外線を当ててから帰るらしく、私のベッドの横を通りぬけ、隣の部屋へ入って行った。



「赤外線、よろしくお願いします」


瀬名先生は看護婦さんにそう言い、ドアを閉めた。



「お待たせしました。午前の患者さんは平野さんが最後です」


私は有給を使って、会社を休み、ここへ来た。


「どうですか?腰の方は・・・・・・」



上を向いて寝ていた私の腰をゆっくりと横に向ける。


私は顔を横に向けようとする。



「あ、待って。上半身はそのままで。腰をちょっとひねってみますので」


無理無理。


だって、顔を上に向けたままって、瀬名先生と顔が近すぎだから!!



マジで鼻血出ますって。




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