桃色ドクター



「もう愛してません!!」



悔しそうに受付嬢は叫んだ。


お疲れさまでしたと言い残し、彼女は去って行った。




「実際にあなたにお会いできて、良かったです」


由美子さんと初めて目が合った。



本当に美人だ。


受付嬢も美人だし、私はふたりに比べて、どこまでも『ふつう』……


でも、選ばれた。



瀬名仁ノ介に愛された女なんだ。




「送るよ」



仁ノ介は、由美子さんを家まで送ると言った。



私は後部座席に乗り込んだ。



申し訳なさそうに助手席に座った由美子さんは、時々仁ノ介の横顔を見つめていて、胸が痛くなった。



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