桃色ドクター
第14章~初めての夜~
仁ノ介の部屋は、ほど良く散らかっていた。
脱ぎっぱなしのパジャマが、愛しい。
お洒落な内装に、落ち着いた黒の家具。
飲みかけの缶コーヒーと、読みかけの新聞の朝刊がテーブルに置かれていた。
ソファには、難しそうな医学の本。
ベッド脇のテーブルには、書類。
仕事、忙しいんだよね、仁ノ介。
女3人の醜い争いで疲れた仁ノ介は、また明日も医者として働く。
「仁ノ介……」
私は、冷蔵庫から缶コーヒーを取り出した仁ノ介の背中に抱きついた。
「香織、気が早いな」
仁ノ介は、ゆっくりと冷蔵庫を閉め、私を抱き寄せた。
「違うの……仁ノ介がかわいそうで。仕事大変なのに、いろんなトラブルで……」
「自分がまいた種だから。それに、さっきも言ったけど、香織がいるから平気だよ」
缶コーヒーを私の頬に当て、仁ノ介は私のおでこにキスをした。