桃色ドクター
恵理は、私と仁ノ介が正式に付き合うことになり、少しほっとしているようだった。
自分の嘘のせいで、ふたりを傷つけてしまったと、深く反省していた。
「でも、大丈夫なんですか。その婚約者の人、めちゃめちゃ怖いんですけど」
「だよね~!だってさ、お会いできて嬉しかったです、なんて言ってたくせに。裏の顔があったとは……」
かじりかけのパンを、近づいてきた鳩に投げた。
一羽だった鳩は一気に20羽くらいになっていた。
「恵理も頑張るんだよ。雅也と付き合えるように」
「はい!!先輩も負けないでください」
うん、負けない。
だって、こんなにも好きなんだもん。
由美子さんも受付嬢も、仁ノ介が好き。
でも、私だって好き。
負けないくらい好き。
あんなにかっこよくて、優しくて、甘い仁ノ介だもん。
たくさんの女性が寄ってくるのは仕方がない。
私は残りのパンを全部鳩に投げ、仕事へと戻る。
負けない。
絶対に負けない。